江津本町で撮られた古い写真にくぎづけになりました

何気なく目にした一枚の写真にすっかり魅せられてしまうということがあります。

この時が、まさにそうでした。

「鉄道ファン」5月号に掲載されていた「忘れ得ぬ鉄道情景」というシリーズの10回目。「江の川に沿って三江北線のC56」というタイトルの記事です。いのうえ・こーいちさんが文章を書かれ、写真もいのうえさんのものです。

その最初に掲載されているモノクロ写真。

鉄道雑誌の記事ですから、蒸気機関車であるC56が主役です。でも、目を惹いたのは周りの風景。実はこれ、私が小学生の時代に暮らした島根県の江津本町のものなんです。しかも、この写真に写されているエリアは私の住んでいた所から歩いて数分。このあたりを毎日歩きまわっていたんです。

いのうえさんが写真を撮られた場所もわかります。私もよく遊んでいた小高い山からです。

本当に懐かしくて、この日は夜、お酒を飲みながら何度も何度も眺めては小学生時代のことを思い出していました。

この写真の近所にある母の実家であるお寺(円覚寺)でよく遊んでいたこと。

病気になると近くの花田医院や矢富医院で治療をしてもらったこと。

ボーナスが出ると、両親が奮発して近所のお肉屋さんに行き、一緒に牛肉を買っていたこと。

街を流れる水路でカニを捕まえて遊んでいたこと……、などなど。

そうそう、小学生の3、4年の頃だったでしょうか、担任の先生が産休で休まれたときに代理で若い先生が数ヶ月、我々のクラスを担当されたことがありました。飯田先生とおっしゃいました。音楽を専門にされていた方で、ピアノの上手な素敵な先生でした。その先生にクラシック音楽の楽しさを初めて教えてもらった記憶があります。ご自宅がこの写真のすぐそば。特徴のある魅力的な建物(現在、街のシンボルのような存在の建物となっています)だったのも懐かしく思い出します。

と、そんな風に次々に記憶を甦らせていました。

写真というのは、ある時代を切り取ることができるものです。それを見た瞬間、一気に懐かしい体験の数々を甦らせる、本当に凄い力を持っているものですね。

個人で撮られた写真というのは、全国に膨大な数あるはずですが、その多くがやがて人知れず消えていくことでしょう。

でも、そうした写真も何かしら皆さんで共有し(もちろん撮られた方の許可は必須です)、分類できるシステムがあれば、それで古い記憶を甦らせて懐かしむ方々もいらっしゃるのではないでしょうか。

将来、そんなシステムができないかなぁ……と思ってしまいました。

ところで、このエリア、現在は「甍街道」として知られ、古い町並みが保存されています。交通の便が決して良くはないエリアなのですが、逆に、それが故に、のんびりとした、とても素敵な風景が残されています。みなさんもチャンスがありましたら、ぜひ訪れてみてください。

市の案内ページはこちらです。
https://www.city.gotsu.lg.jp/soshiki/4/4657.html

また、「鉄道ファン」のこの記事では後半、かつての「石見川本」の駅も出てきます。こちらも懐かしいと思われる方がいらっしゃることでしょう。